まちづくり福井株式会社

“引き算のデザイン”が秀逸な「古民家カフェ35(ミーコ)」

片町の片隅に“古民家カフェ”があるのをご存じですか? 名前は「古民家35(ミーコ)」と言います。玄関は古い旅館のような雰囲気ですが、お店の中に入るとすっきりとして、のんびりとした時間を過ごせる空間が広がっています。店主さんは、県外出身で大学時代に建築を学び、フリーランスのグラフィックデザイナーとして活動していました。

ある時、保護猫を実家で飼おうとしたところ、家族の猛反対で飼うことができず、猫と住むのならば2週間で家を出て行けと厳しい現実を叩きつけられ途方に暮れていました。保護猫のために住む場所を探した結果、かつて帰省で帰っていた、福井にある祖父母の空き家を思い出し、自然な流れで今の場所に移住を決意しました。当時、取り壊しの話も進んでいましたが、古民家の状況を見て「ボロボロのゴミ屋敷でも自分で改修できるのでは」と判断し、2015年に引っ越してから3週間という短期間で最低限住める状態まで自分で改修しました。

移住後、空き家に残っていた家財の整理に3ヶ月かかり、整理していく中で、古民家の持つ作りが面白いので、お店にしたい思いが募ってきたことと、また、フリーランスの仕事は、引きこもりがちになることから、「カフェを開けばコミュニケーションが生まれるかも」と思い立ち、お店を開くことを決意。学生時代に学んだ建築知識を活かし、店主さん自らが床の基礎工事からお店の什器、棚までDIYで作り、移住から8ヶ月後の2016年4月に、1階部分をカフェと雑貨のスペースとして「ミーコ」をオープン。  その後、約1年半後には2階部分も店舗スペースとして拡張しました。

店主さんは当初、「シンプルな、引き算のデザインのおしゃれで洗練された空間」を目指していましたが、もともと普通の住宅だった建物を無理やり店舗にしたことや、建築的な制約もあることから、築70年となる古民家の趣を活かす方針に転換しました。本来の雰囲気に馴染む空間作りを心掛け、格好つけず、あえてダサくしている空間もあるとのことです。カフェスペースの本は、猫や建築・デザインに関する本を中心に取り揃え、手に取ることもできます。この自然な雰囲気が、お客さんにとって「落ち着く」空間となっています。 また、お店で仕入れる雑貨は、立地や物件の制約がある中で店の雰囲気に合うものを中心に、「ほっこりするもの」「洗練されているもの」「可愛いもの」をセレクトしています。

客層の9割以上が女性で、年代は20代から60代までと幅広く来店されます。お客様にお話を聞くと、雑貨や個人経営のカフェが好きな人が多く、チェーン店のような画一的な店舗よりも、「味のある」お店を好む方が多いようです。常連客だけでなく、新規の若い客も増えています。